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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第4章 子犬のワルツ


着替えを済ませ、店内に行くと
丁度翔が掃除を終えたところだった。

「お疲れ」

「俺も着替えてくるね」

掃除道具を持って、事務所に行こうとする翔の腕を掴んだ。

「あ、待って翔…」

「何?」

翔が小首を傾げた。

「『星に願いを』って曲知ってる?」

「うん、知ってるよ?それが何か?」

「どういう曲か教えてくれね?」

「え?なんで?」

「いや、今ニノと話してたんだけど
どういう曲か思い出せなくて…
思い出せないのって気持ち悪いだろ?」

「うん…まぁ…そうだね」

本当は覚えてる…
俺が知ってる数少ないディズニーの曲
ちゃんとわかるのは、この曲しかないと言ってもいいくらいだ。

「ピアノで弾ける?」

「弾いたことはないけど、弾けるとは思う」

「やっぱそうなんだ…」

「え?」

俺が小さな声で呟くと、翔が聞き直してきた。

「ううん、何でもない…
触りだけでいいから弾いてくれね?」

「う、ん…少しだけなら…」

「よしっ!頼んだ」

俺は翔の手から掃除道具を奪い取ると
翔の肩を押すようにピアノの前に連れていった。

ゆっくりと椅子に座り、ピアノの蓋を開ける翔。

両手を鍵盤の上に置き、大きく息を吸い吐くのと同時に、指を動かし始める。

翔の奏でるメロディは、元々の曲調のせいか
この前聴いた時よりも心地良かった。

懐かしさも加わり、翔のピアノに合わせてメロディを口ずさむ。

「~♪」

あれ?ピアノの音色が変わった?
少し柔らかくなったような…

触りだけなんて言ってたのに、結局丸々一曲弾いてくれた。

パチパチパチ…
拍手が聞こえ振り返ると、ニノが手を叩いていた。
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