第4章 子犬のワルツ
荷物を持って家に辿り着く。
荷物をひとまず、リビングに置いた。
「やべっ、マジで急がないと、ふたりして遅れたらニノに怒られる。
急いでメシ作るから、翔は買ってきたモノ片付けちゃって」
智が俺に指示を出すとキッチンへ入っていった。
「俺も手伝います」
「今回はいいよ。パジャマとか出しておかないと、夜使うんだから
今度は夜がバタバタするぞ?」
「そっか…」
「あ、でもその前にさっき渡した小さい袋から開けてくれる?
そっちの方が先に使うからさ」
「え?これですか?」
小さな紙袋をテーブルの上に置いた。
智はカウンターキッチン越しに顔を覗かせると頷いた。
「うん、そうそれ…」
俺は紙袋から包みを出し、巻かれていた赤いリボンをほどいた。
包装紙を丁寧に剥がしていき、出てきた箱の蓋を開けると
中に入っていた物は、ご飯用の茶碗とお箸とマグカップ…
「これ…」
「翔専用の食器…
今朝までお客さん用の使って貰ってたからさ
ここに住むならお客さんじゃないだろ?」
お客さん用ので十分だったのに…
いつ出ていくかわからない俺の為にこんなわざわざ…
智がキッチンから出てきた。
俺の前にしゃがむと、頭をクシャッと撫でる。
「だからさぁ、泣くときは声出して泣け。
静かに泣かれたんじゃ気がつかないし
嬉しいのか悲しいのかわからないって…」
そんなこと言われてもさ…
智が用意してくれた食器たちが
『お前はずっとここに居ていいんだよ』って『お前の居場所はここだよ』って言ってる気がして…
凄くホッとしたら、また知らず知らずのうちに涙が溢れてたんだ…