第4章 子犬のワルツ
朝食を智に教わり手伝いをしながら一緒に作った。
「ふぅ~、出来た」
「どうだ?自分で作った目玉焼き」
「目玉になってないですけど…」
「だってお前、卵もまともに割れないんだもん」
「智の分まで崩れてしまって、すみません…」
「ははっ、気にするなよ。
お前の初料理だろ?超貴重なモンだぞ?」
智の手がまた俺の頭を撫でる…
それだけで落ち込んでる気持ちが浮上してくるから不思議だ。
「食べ終わったら買い物行くからな」
「はい…」
俺の作った目玉焼きを智が『うんっ、旨い!』と笑顔で食べてくれた。
卵を割っただけのしかもグジャグジャの目玉焼き…
「いいんだって…人の為に頑張って作った物は、それだけで旨いんだから」
智の笑顔は、嘘を言ってる様には見えなくて
だから俺もまた頑張ろうって思えた。
いつか本当に美味しいものを智に食べさせたい…
後片付けをして智と買い物へ出掛けた。
「パジャマの他にも、服何着か買おうな?」
「え、でも俺そんなお金持ってないです」
潤に貰ってたお金は、家賃と食費と光熱費でほぼ消えた。
少しだけ残って貯めておいたお金もあるけど、何枚も洋服を買うくらいには残ってない。
「後払いでいいよ。
お前が給料を貰ってから、毎月少しずつ返せ」
「ありがとうございます」
少しずつ返せなんて…
これも智の優しさなんだろうな。
俺の負担にならない提案の仕方。
買ってやるって言われたら絶対遠慮する。
でもあまりにも俺の手持ちの洋服が少ないから、買わないと確かに不便。
昨日の俺の荷物の少なさに驚いてたもんな。
ショップで貰った紙の手提げ袋に、下着類とあのパジャマも含め、スカスカの状態だったんだから。