第4章 子犬のワルツ
《翔サイド》
智との生活はまだ始まって1日しか経ってないのに
俺には初めてのことだらけ。
昨日の味噌汁のこともそうだし、昨夜作ってくれたお茶漬けもそう。
今朝なんて布団の畳み方まで教えて貰って
何もかもが新鮮に感じる。
それに何よりも驚いたことは、朝の目覚めが良いこと。
スッキリと目が覚めた…ちゃんと眠れてる証拠なんだろうけど
こんな目覚めがいい朝は何年ぶりだろう…
人様の家なのに…
智のおかげなのかな…
智は人を和ませる力がある?
人に気を使わせない雰囲気…
はじめに挨拶したとき『堅苦しいの苦手』なんて言ってたけど
智といると自然と体から緊張が抜けてる気がする。
たまに強めに言ってくることもあるけど、それは俺が躊躇ってしまいそうな時だし…
言い方は強目だけど、優しく手を差し伸べてくれてるような…
潤の時は何事も強引に話が進められた。
俺が行くところがないと言った時も、家を出たいと話した時も、望みを叶えてはくれるけど決定権は全て潤。
俺が一を話すと残りの九は潤の思うがまま。
潤に初めて抱かれた時も『大丈夫、幸せにしてやる』なんて半ば強制的だったし
そのあとだって『愛してる』の押し付け…
俺がどう思っていようと関係なかった。
あのボロアパートだって
ほんとはもっと安い、トイレ共同、風呂なしなんてところがあったのに、そこは駄目だと拒否された。
端から俺の意見は、あって無いようなもの…あの人のやり方と少し似ている。
それでもひとりになれる時間が与えられたから…
自由に過ごすことが出来たから、全然マシだったけど。