第3章 春の歌
接客業をしてるからには、ある程度の情報収集は必要で
録画しておいたテレビ番組を観ながら、メシを食い
その後、水に浸けておいた食器を洗い、風呂に入る。
これが俺の日常の流れ。
でも今日は、翔が皿洗いをすると言うので任せることにした。
ここで暮らすなら、あいつにも仕事を与えた方がいいと思ったから。
洗い物は店で教えたから、ひとりでやらせても問題ないだろうし。
「後は頼んだ。終わったら先に休んでいいからな?」
「はい、ありがとうございます」
「んじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
風呂にゆっくりと浸かり、1日の疲れを取る…なんて俺には出来ないんだけど。
なんたって長風呂が苦手…すぐに逆上せちゃうんだよな。
洗った髪を乾かし、15分程でリビングに戻ると翔の姿はなかった。
もう寝たんだな…洗い物はちゃんとしてある。
俺は冷蔵庫を開け、缶ビールを取り出した。
プルタブを開け一気に流し込む。
「プッハァ~、ウマっ!」
一日の終わりはやっぱこれだな。
自分でカクテル作る仕事してるのに、こんな安いビールで一日の疲れを癒すなんて…なんて安上がりな男。
ビールを飲み終え、寝室に入ると
翔の寝息が聞こえた。
起こさないように静かに近付き、顔を覗くと今朝と同じ可愛い寝顔をして眠ってる。
その頭をそっと撫で、俺もベッドに入った。
新たな癒しが増えたな…
ペットに癒される人が増えてるが、どうやら俺も仲間入りらしい…
もう一度翔の寝顔を見てから眠りに就いた。
翌朝、と言っても昼近いんだけど…
目が覚めるとまだ翔は布団の中で気持ち良さそうに寝ていた。
俺はベッドの上からその寝顔を眺める。
ニノが言うようにほんとに綺麗な顔立ち…
勿体ねぇなぁ…
笑ってたら、寝てるときだけじゃなく起きてるときだって可愛いだろうに。
そんなことを考えていたら、目覚めた翔と目が合った。
「おはよ」
「おはようございます」
「今日は驚かないんだ?」
「ちゃんと智の家だって覚えてましたから…
でもいきなり目が合うのは、少し驚きましたよ?」
「ははっ、悪かったな驚かせて…
あまりにも気持ち良さそうに寝てたから、ついつい見続けちゃったよ」