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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第3章 春の歌


部屋のある5階までエレベーターで上がる。

「誰も居なくて良かったな」

「こんな時間に出歩く人、そうそういないんじゃないですか?」

閉店が深夜2時で、今日は翔のアパートに寄ったから、3時は軽く過ぎている。

「ま、それもそうか…」

玄関の鍵を開けドアを大きく開き、翔に中に入るよう促した。

「リビング手前のドアが寝室だから、そこに布団置いて」

「ここですか?」

寝室のドアの前に立つ翔。

「うん、そこ」

俺は一度布団を足元に置くと、玄関の戸締まりをして中に入った。

寝室に行くと翔が布団を持ったまま立っていた。
 
「その辺置いていいよ。
他に部屋は無いから、ベッドの下に布団敷くことになるけど、いいよな?」

「俺は寝られるなら何処でも問題ないですけど…」

「もう一台ベッドを置くスペースが無いからさ
悪いけど布団での生活になるな」

「そんなこと気にしないでください。
それにお金が貯まれば、ここも出て行きますから…
長居する気はないです」

馴れてきたかと思えば、また距離を置くような発言。

人の好意に慣れていないのか、やはり人を簡単には信じきれないのか…

それでもここに来ることを決めたんだから、人との関わりを完全に絶ちたいわけでもないんだろうな。

まあ、まだ同居生活は始まったばかり。
ゆっくりと進んでいけばいい。

リビングに移動し、そこからキッチンへ入る。

「翔、腹へらね?何か軽く作るから風呂入ってきなよ」

「え、今から作るんですか?」

「うん。でもほんと軽いものだよ。
お茶漬けとかな」

「ありがとうございます。
それじゃあお風呂お借りします」

「ん、いってきな。タオルは浴室の棚に置いてあるから好きに使って」

「はい」

翔は昼間持ってきた荷物から、着替えを用意し風呂場に行った。

はぁ~…『お借りします』、か…

まぁ、しゃあねぇな。
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