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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第3章 春の歌


潤の車に4人で乗り込んだ。

助手席には智が座り、後ろの席には潤、ニノさん、俺の順で座る。

「翔の家ってどの辺なの?」

「店から2キロくらいか…
昨日歩いて30分位掛かったもんな」

「もっといい場所借りてやるって言ったのに
一番安いところでいいって言うから。
いつ壊れてもおかしくないくらいのところだよな?」

「ほんとそうでした。
床はギシギシ鳴るし、あれじゃ周りの住人に気を使って、深夜なんかに帰ったら何も出来ない」

「特にやることないですし…」

「でもシャワーも出来ないでしょ?」

「それはまあ…」

「それにこいつ、食事もまともに摂ってないし…
ただでさえ不規則な生活になるんだから、栄養くらいちゃんと摂れる食事しないとな」

「ご飯なんて、生きてく為に必要なカロリーさえ摂れてれば問題ないですよ」

「なに言ってんの、翔!
こんな綺麗な顔してんだから、美容には気をつけないと駄目だよ」

ニノさんが本気で指摘してきた。

「綺麗なんてそんなこと…
それに俺、男ですけど」

「あのね、翔…
翔は綺麗な顔してるよ?
しかもこの辺りは男の人を狙う奴だって沢山いるんだよ?
現にここにいるでしょ?で、現に声掛けられて、連れて行かれたでしょ?」

潤の顔をチラッと見ると眉毛を少し下げて、情けない顔をしていた。
今まで見たことのない潤のその表情がおかしくて、クスッと笑ってしまった。

「ほら、可愛い」

「え?」

「翔の笑った顔…初めて見たけど、可愛い顔してる」

可愛いなんて言われたことない…

影で囁かれて俺の耳に入ってくるのは『心ないアンドロイド』。

いつも無表情で、完璧な演奏をするから
世間にはそんな風に、嫌味混じりで言われてた。

笑ったのなんて何年ぶりだろう…
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