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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第2章 幻想曲


歩き出して約30分…
人通りのない、だいぶ静かな住宅街に入ってきた。

「家ここです…」

翔の指差したアパートは、築何十年経っているんだ?って聞きたくなるくらいのボロアパート。

「随分古びた所に住んでるんだな。
潤さんなら、もっと良い所借りてくれそうなのに」

「俺が、出来るだけ安い所でいいって言ったんです。
潤から貰うお金は、少なくしたかったので」

『身体売ってるようなもんだ』って言ってたけどさ
本当はコイツも、望んでたことじゃないんだよな…
ちゃんと仕事して、金稼ごうとしてるくらいだし。

「あの、今更なんですけど、智ってどこに住んでいるんですか?」

「俺?俺は店から10分くらいの所に住んでるよ」

「え?すみません、こんな遠くまで送って貰ってしまって…」

「いいんだって。
よかったよ送ってきて…こんな人気の無いところひとりで帰らせる方が心配だわ」

「でもここからまた歩いて帰るんですよね?」

「ん、そうだな…タクシーも通ってないし。
まぁ、タクシー乗るほどの距離でもないしな?」

翔は視線を落とし、少し考え込むと、自分の中で決着したのか『うん』と頷いて俺の顔を見た。

「智、もし良ければ、家に泊まっていきませんか?」

「え、翔の家?」

「はい、何もないですけど、寝るだけなら出来ますから。
仕事で疲れてるでしょうし、時間も遅いですから
朝、電車で帰った方が良くないですか?」

「いいの?」

「俺としてはそちらの方が…今からまた30分歩かせるなんて申し訳なくて」

「そう?ならそうさせて貰おうかな」

「はい、そうしてください」
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