第2章 幻想曲
漸く俺の隣に並んで歩き始めた翔。
「お前さぁ、今日、潤さんがニノのこと送っていくことどう思った?」
口では潤さんのことを何とも思っていないと言いつつも、心の中では気にしてるかもしれない。
もしそうならフォローしてやらないと…潤さんはお前のこともちゃんと愛してるよって。
でも実際問題そんなの間違ってるんだよな…ふたりのことを同時に愛してるなんてさ。
「正直ホッとしました」
「ホッとした?」
なんだか思っていたのと違う答え。
翔のことだから嘘でも『全く気にしてない』って言うと思った。
「ええ…昨日、潤が俺を選んだことでニノさん傷ついてたでしょ?」
コイツ気がついてたのか。
「俺も、もっとちゃんと断れば良かったんですけど
潤に話したいこともあったので、申し出を受けちゃったんですよね。
でもニノさんを見たら、哀しそうな目をしていて、だから悪いことしたなって…
オープン前に話した潤の表面上の優しさって、この事もあってなんです。
俺に優しくしたことによって、ニノさんを傷つけてる…
それは本当の意味での優しさって言えないですよね?」
そんなことまで考えてたのか…
「翔…お前さ、心が無いなんて言ってるけど優しいじゃん」
「は?何言ってるんですか?
俺が優しい訳ないでしょ?」
「いや、優しいよ…優しくないと人の心の傷の痛みなんてわからないよ」
「やめてください…
俺はただ、俺のせいで誰か不幸になるのは間違ってると思っているだけなんで」