第2章 幻想曲
潤さんとニノを乗せた車を見送り、振り返ると既に翔は歩き出していた。
「おいっ、翔。ちょっと待てよ」
「お疲れさまでした」
俺の呼ぶ声に振り向きもせず、歩いて行こうとするから小走りで追いかけた。
「おい!ちょっと待てって!」
翔の肩に手を置き翔の歩みを止めた。
「なんですか?」
やっと俺の顔を見た翔。
「いや、なんですかじゃなくて
送ってくって言っただろ?」
「だから大丈夫ですって」
「でもさっき、潤さんとニノに約束しただろうが」
「あんなの、ニノさんを安心させる為に決まってるじゃないですか」
「理由はどうであれ、約束は約束だろ?
ちゃんと守れよ」
そう言うと翔は少し目を見開いた。
「智って、意外と真面目なんですね」
別に真面目な訳じゃないさ
お前が心配なだけだろうが…
コイツは、自分がどれだけ人を惹き付ける容姿をしているのかわかっているのか?
「こんな深夜にお前みたいなのがひとりでフラフラしてたら、冗談抜きで拐われるぞ?」
「あぁ、まぁ確かに?
潤に声を掛けられたのも、この位の時間でしたね…」
「はぁ…お前、前科ありじゃねぇか…」
「前科って…別に犯罪は犯してません」
「もぉいいから、大人しく送らせろ…
これで万が一の事があったら、俺が潤さんとニノに殺されるわ…」
「…わかりました」
翔は渋々といった感じで了承した。