第2章 幻想曲
「もう帰れるのか?」
3人が着替えを終えて店内に戻ると、潤さんが誰ともなしに聞いてきた。
翔は答える気は無さそうだし、ニノは昨日の事があるからか少し躊躇ってる。
「もう帰れますよ」
俺が答えると、潤さんは頷いて椅子から立ち上がった。
「じゃあ帰ろうか、カズ」
潤さんはニノの前に立つと、肩に手を置いた。
「え…翔は?」
ニノが翔の方を見ると、翔はさも当然とばかりに
「俺は歩いて帰ります」
「でも、もう時間も遅いし…」
「女の子じゃないんですから、心配しないでください」
翔がそう言っても、心配そうな表情をするニノ。
理由は夜道だからだけじゃないんだろ?
昨日ニノが感じた想いを、翔にさせたくないんだろ?
さっき話したように、翔が愛に飢えてるとしたら
潤さんがニノを選んだことで、益々傷つくんじゃないかって心配なんだろ?
「翔のことは俺が送ってくよ」
「智…」
「だから今日は、ニノが潤さんに送って貰え」
俺がそう言うと、潤さんは俺に向かって微笑んだ。
「悪いな智、翔のこと頼んでもいいか?」
「任せてください、ちゃんと家まで送り届けますから」
「お願いね、智。
翔、ちゃんと智に送って貰ってよ?」
「そんな心配しなくても大丈夫です…
来るときだってひとりで来られたんだから、帰りだってひとりで帰れます」
「翔、いいから送らせろ。じゃないとニノが安心して帰れないから」
翔がニノを見るとニノは小さく頷いた。
翔は小さく息を吐くと、俺に向かってペコッと頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「おう、任せろ」
「話は纏まったな。じゃあ行くか」
潤さんはニノの肩を抱き歩き出した。