第2章 幻想曲
「翔の考えはわかったよ…
とりあえず着替えて来ちゃって?店のオープンに間に合わなくなるから」
「はい…」
翔が店の奥に消え、ニノが俺に向かって苦笑いをした。
「智はどう思う?翔のこと…」
「昨日も話してて思ったけど、『人の愛』って物を端から信じてない感じだよな」
「潤は本気で翔を愛して抱いてるんだ…
それなのにそのことを全く感じないなんて…」
「もしかすると、翔は愛されるってことがどういうことなのか、わかっていないのかもな…」
「どういうこと?」
「ん~、よくわからんが、昨日潤さんが『人との関わりを学べ』って言ってただろ?
普通はさ、家族や友人たちと過ごしていく中で自然と学んでいくモノじゃん。
でも、そういった環境で育たなかった場合どうなんだろうな」
「親がいないってこと?」
「いや、あの立ち振舞い見てると、そこそこいい家庭で育ったんじゃねぇか?
でもあの暗い瞳を見てると、愛情を与えられて来なかったんじゃないかと思えて…」
「愛を知らずに育つ。
人の感情の根源にあるべき『愛情』が欠如してる…だから『心がない』…か…
それなら納得できるね…心がなければ愛を感じることはできない」
「愛に飢えてるのに、愛を受け入れられないなんて、哀しいな…」
「そうだね…冷めた態度を取ってはいるけど、悪い子ではないし…
だから余計心配なんだよね」
「今の話だと、もう潤さんからの支援は受けないみたいだよな。
潤さんから離れるなら、ここで飼いならすしかないんじゃないか?あの捨て猫…」
「だね…智も協力してよ?」
「ああ、勿論…」
あんなに寂しそうな瞳の猫…放っておくことなんて出来るわけないだろ。