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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第2章 幻想曲


《智サイド》

店の前に来ると、ピアノの音色が聴こえた。

ニノが、いつも潤さんの為に弾いてる曲…

クラッシックに疎い俺は、曲名は知らないけど
潤さんがリクエストするから、もう何十回、いや下手すりゃ三桁いくんじゃないかってほど聴いてきた。

でもこの音…ニノの音じゃない?

上手いのは上手い。
技術的には、ニノより上手いかも知れない…いや、確実にニノより上手い。

なのに、なんでだ?
全然心に響いてこない…

ニノが弾いてるのを聴いてるときは、切なくなるのに。

ドアを開け中に入ると、ピアノの方を向いて立っているニノがいた。

俺がその横に立つと、ニノは俺に気が付いた。

俺の方を向いたニノが、哀しそうな微笑みを浮かべた。

演奏が終わり、翔が振り返る。

「安心して貰えました?」

「えっ?」

ニノが疑問の声をあげる。

「俺の音…感情がないでしょ」

「う、ん…」

「本当のこと言って貰って大丈夫ですよ?
俺の弾く曲は、聴き手の方の心を揺さぶらないそうなんで。
それでも、この曲はまだマシですね
元々が孤独を感じさせる曲ですから…」

「でも、凄く上手かったよ?」

「技術なんて、やればやっただけ上手くなりますから…
でもニノさんのように、誰かに『聴きたい』と思って貰えるような演奏は出来ない。

俺のように、心がない人間は、機械が演奏しているのと同じなんです…
だから、俺がピアノを演奏する必要はないんですよ」

「心がない?翔が?」

「はい…
だから、俺が潤を好きになることはない。
俺は誰のことも愛することはないんです…」

愛することはない?本当に?

ならなんで、そんな顔してんだよ…

今の翔の顔…今にも泣き出しそうなくらい、哀しい表情してるじゃん。

本当は、誰よりも愛を必要としてるんじゃねぇのか?

ニノも、さっき翔の弾くピアノを聴いてわかったんだ…
コイツには愛が足りてない。

だからニノは、哀しい顔をしていたんだ。
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