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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第12章 波濤を越えて


「さとし…」

翔が俺の胸に顔を埋めながら話し出した。

「ん?」

「俺ね、前にも言ったけど、潤に拾われたことは本当に良かったと思ってる。
そうじゃなきゃ、智に出逢えてなかったし…
逆に言えば智に出逢えたから潤とのことも良い思い出、って言うか…良い経験だったな、って思えるんだ」

「うん…」

「智に初めて抱かれたときね、本当に幸せだった。同じ行為な筈なのに、全然違って感じて…
でも、その『違って感じる』ってさ、前に経験してなければそうは感じないわけでしょ?」

「そうだな」

翔の想いを知って、愛しさが込み上げて来る。

俺は翔の髪を撫でながら続きを待った。

「だからね、潤に抱かれたことは、智に抱かれるのがいかに幸せなことか知るために
必要な行為だったんだって思ってる」

「うん…」

「だけど、やっぱり気持ちが伴った行為ではないから… 狡いかも知れないけど、潤とのことはカウントに入れたくない。
俺が抱かれたいと思ったのは智だけだから」

翔が漸く顔をあげて、俺を見つめてくれた。

「翔に言われるまでもなく、翔がそう思っているのはわかっていたのに…
ほんと最低だよな、俺…」

「もういいよ、智…」

微笑んで赦しの言葉をくれた翔。
ぎゅっと抱きしめると、翔も抱きしめてくれた。

「愛してる、智。
これまでも、これから先も…俺がこの人生の中で愛するのは、あなたひとりだけ…
だから『俺は智だけなのに』なんだよ?」

「うん、わかってる。
過去には戻れないから『俺も翔だけ』とは言ってやれない…
過去には本気で好きだった人もいるから、そこは嘘はつけない。
でも未来のことは言ってやれる。
これから先は翔だけ…
俺がこの人生の中で一番愛する人は、お前だよ、翔」
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