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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第12章 波濤を越えて


頭を下げたままでいると、布団を捲る気配がした。
顔を上げると、既に翔が布団に潜り込んでいた。

『おやすみ』の挨拶もないなんて…

「……なぁ翔…どうしたら赦してくれる?」

もはやお手上げ状態の俺は、解決策を翔本人に聞くしかなかった。

「………」

何も答えてくれない翔…
俺はソファから立ち上がり、翔の正面に回った。

「なぁ…しょ、お?」

「…ふっ…ぅっ…」

布団を深く被った翔は、涙を溢し泣きじゃくっていた。 
俺は布団を引き剥がすと、翔のことを抱き起こし、ぎゅっと抱きしめた。

「ごめんっ、翔!全部俺が悪い!
何度でも謝るから、もう泣くな」

以前、沢山泣かせてやるって言ったけど
それは幸せな涙であって、こんな哀しい涙じゃない。

「ふっ…うぅっ…」

「ごめんな、翔…俺、お前のこと傷つけたよな…」

背中を撫でてやると、翔の手が俺のシャツをキツく握りしめた。

「さ、としっ…ぅっっ…」

翔が泣き止むまでずっと、落ち着かせるようにゆっくりと背中を擦った。

「大丈夫、か?」

泣き止んだ翔の顔を覗き込んだ。
視線は合わせてくれないけど、コクリと頷いてくれた。

「ほんとごめんな。『潤さんがいるだろ』なんて軽く言っちゃって。
翔にしてみれば好きで抱かれた訳じゃないんだもんな…」

初めての経験なんだから、本当なら好きな人としたかったハズ。
自ら望んだものではなく、生きていくためにやむ無しの選択だった。
それなのに俺ときたら…余りの失言だった。俺だって初めての相手は、当時、本気で好きで付き合ってた彼女だったのに。

翔が潤さんと持った関係は、俺の遊びなんかと一緒にしちゃいけなかったんだ。
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