第12章 波濤を越えて
「智…」
翔の瞳に涙が浮かぶ。
今度は幸せな涙だよな?
これから先も、翔の瞳に浮かぶのは幸せな涙だけであって欲しい…
実際哀しい思いをしない人生なんて無理なことだろうけど
少なくとも、俺が哀しい涙を流させるようなことは二度としない。
「翔…お前だけを愛してるよ…」
翔の唇に愛の囁きを落とすと、翔の瞳から涙が溢れた。
「愛してる、智…」
翔の腕が俺の首の後ろに回り、そっとキスを返された。
そのまま布団に翔を横たえ、想いを込めてキスを贈る。
初めてふたりで寝た布団。
初めて一緒に夜を過ごした場所…
翔…この場所で、もう一度ふたりで再確認しよう?
愛する人と抱き合う行為が、いかに幸せなことかということを…
「あっ…あっ、さとしっ…」
「はっ、あ…しょ、ぉっ…」
なぁ、知ってるか?翔。
お前が俺の元から離れている間、『星に願いを』を口ずさみながら、お前の願いが叶いますように、って毎日祈ってたんだぞ?
ニノに知られたら、また笑われんだろうな『いつからそんなロマンチストになったんだ』って…
そんな柄にもない事をしてしまうくらい、お前には幸せになって貰いたいんだ。
こんなに愛おしいと想うのは、生涯お前だけ…
「しょ、ぉ…」
名前を呼ぶと瞼がゆっくりと開き、その奥に潜む艶やかな潤んだ瞳が俺を捉える。
その瞳を見つめながら、翔を突き上げると俺に向かって手を伸ばす翔。
「さ、としっ」
その手をしっかりと握りしめ、腰を引くと一気に最奥へと送り込んだ。
「「ああぁっっ!…愛してる!」」
ふたり同時に溢れた想い…何度も想いを確め合い、今、俺の腕の中には幸せそうに眠る翔。
そんなきみに…今夜も届けるセレナーデ。
End