第12章 波濤を越えて
「さてと、翔のご機嫌ナナメも治ったし、帰ろうか?
ふたりのこと見てたら、俺も早く潤に会いたくなった」
「羨ましいか」
「うわっ!やだねぇ。さっきまでオタオタしてたクセに急に強気」
「すみませんニノさん。俺の勘違いのせいで」
翔が申し訳なさそうな顔をすると、ニノが顔の前で手を振った。
「あ~、いいのいいの。
なかなかふたりの痴話喧嘩なんて見られないから
俺も見てて楽しませて貰ったし。
ヤキモチ妬いちゃう翔、可愛いよねぇ」
「ヤキモチ妬かなくても可愛いわ…」
ボソッと呟く俺と、呆れ顔のニノ。
「はいはい、ご馳走さま。
人は変わるもんだねぇ…あんなに取っ替え引っ替え彼女換えてた人が」
「えっ⁉」
「おまっ!嘘つくなよっ!
俺、そんな頻繁に彼女替えてねぇし!」
「あ~、そうだったね。彼女じゃなかったわ。
お持ち帰りしてただけだ」
ニノがニヤっと笑った。絶対楽しんでやがる!
「ええっ⁉智っ!本当なの⁉ほんとにそんなことしてたの⁉」
「イヤっ、それは…」
詰め寄る翔の勢いに押され気味の俺…
確かに少し遊んでた時期もあったけど、それは前の店でのこと。
一度関係を持つと、彼女ヅラする人もいて、それが面倒くさくてすぐに止めた。
「ははっ!智、よわっ!」
「うるせっ!誰のせいでこんなことになったと思ってんだ!」
「智のせいだよ!ヒドイ!そんなことしてたなんて…」
翔の瞳がうるうるしはじめた。
「翔、許してあげなよ。
若気のいたりってやつだからさ」
「でも、俺は智だけなのに…」
「潤さんがいるだろ…」
思わずボソッと呟いたら、ニノが溜め息を吐いた。
「はぁ~、バカ…」
「えっ…あ…」
気が付いた時には時すでに遅し…
目の前には、ポロポロと涙を溢す翔が。
「ひどぉ~い、智のばかぁ!」
「あっ!ごめん!潤さんは数に入れなくていいからっ」
「ほんと変わったよねぇ…あんなにクールだった男が」
苦笑いをするニノ。
クソッ!お前が余計なことを言ったから!
まぁ、更に余計なこと言った俺が悪いんだけど…
あぁもう、失敗したなぁ…