第12章 波濤を越えて
「あー、また子供扱いした!
自分は31のオヤジだからってっ!」
「してねぇよ…しかもなんだよ、オヤジって…」
「拗ねてめんどくさい奴だと思ってるんでしょ?」
「思ってないって…可愛いとは思うけど」
「かっ、可愛い⁉」
言葉に詰まり、顔を真っ赤に染めた翔の前に歩を進め、ぎゅっと抱き締めた。
「怒ろうと喚こうと拗ねようと、どんなお前でも可愛いよ」
「さとし…」
「俺が翔以外の奴に興味持つわけないだろ?」
「じゃあなんで嬉しそうに笑ってたの?」
「ん?彼女がお前の演奏を誉めたから。
彼女、音大生だって言っただろ?
そんな人がお前の演奏を熱く語ってるの聞いてたらさ、嬉しくなってつい笑顔になってたんだよ」
「…智」
「わかってくれた?」
「うん。ごめん、疑ったりして…」
翔の腕が俺の背中に回った。
「それだけ俺の事が好きってことだろ?」
そんな些細なことでヤキモチ妬いちゃうくらい。
「さとし…」
翔が俺の事をさっきまでとは違う、熱を含む潤んだ瞳で見つめる。
翔の頬に手を添えた所で、突然聞こえた声。
「あの~、完璧俺の存在忘れてるよねぇ」
慌てて声の主を見ると、ニノが苦笑いしてた。