第2章 幻想曲
「仲のいい家族か…
あの人は愛情の中で育った…だからピアノの音も心を感じるんだね。
さっきの演奏、潤のことを想って弾いてるんだなってわかったよ」
「あぁ、カズは冷たく見えるような一面もある。でも根底には深い愛情を持ってるから、だから皆から愛されるんだ」
そう話す潤の顔も愛しい者へ向ける表情。
「なんでニノさんだけを愛してあげないの?」
「え?」
潤が少し驚いたように俺の方を見た。
「ニノさんとの関係続けてるんでしょ?ニノさんは潤のことが好きなんでしょ?」
「ああ、続けてるよ。
カズとの付き合いはもう7年になるのか…3年間は家に住んでた。
もう大丈夫だと思って手放そうとしたのに、カズは俺の傍に居ることが自分にとって何よりも幸せだと言った。
3年もかけて漸く心の傷を癒したのに、俺がいなくなって不幸にしてしまったら意味がない…
だからカズだけは俺の傍にいることを許した」
「その時に、ニノさんだけを愛そうとは思わなかったの?」
「思わないよ…俺の救いを待ってる人は五万といるんだ…カズもそれを理解して俺の傍にいる」
「潤…俺のことどうこう言う前に、自分のこともっとちゃんと考えたら?」
「なに⁉」
「アナタのその考え方、結構ヤバめだと思うけど」
「どこが⁉」
「ニノさんが理解して傍にいるのはわかる。
でもそれって本当に心の底から納得してるのかな?
自分の愛してる人が自分以外の人間を抱いてるなんて普通の人間だったら許せる行為じゃないと思うけど?」
「でもカズは一度も文句を言ったことなど…」
「だから、潤のこと愛していて離れたくないから、無理して我慢してるんじゃないの?
俺にはわからない考えだけどね。
でも智に言われたよ?
潤につけられたキスマークをニノさんには見せないでやってくれって」