第2章 幻想曲
《翔サイド》
店を出ると潤の迎えの車が待っていた。
運転手がドアを開けふたりで乗り込む。
本当は歩いて帰っても良かったんだけど、潤に聞きたい事があったから送ってもらうことにした。
「潤とニノさんて、どんな関係なの?」
車が走り出してすぐ、俺は潤に質問した。
「カズ?カズはお前と同じだよ」
「拾ったってこと?」
潤は少し苦笑しながらも答えた。
「拾っただなんて、人聞きが悪いな…
お前と同じ、死にそうだったから助けたの。
カズの場合、本当に死ぬ直前だったけどね?」
「死ぬ直前?」
「あいつ、駅のホームから電車に身投げしようとしたんだよ。
たまたま隣に立っていた俺が、怪しい動きをしたカズに気が付いて、腕を掴んで止めたんだ」
「何でそんなこと…」
「あいつの家、小さな町工場でさ
そこ自体は経営も上手くいってたんだ。
従業員も皆いい人たちだったって…
でも、親父さんがいい人過ぎたんだろうな…
友人の連帯保証人になって、借金の肩代わりをさせられた」
今時、連帯保証人になる人なんているんだ…
身内の連帯保証人にだって、なるもんじゃないって言われてるのに…
「多額の借金で従業員に給料さえ払えない状況に追い込まれた…で、やむにやまれずとった行動が自分に掛かってる保険金での返済…」
「それって、まさか…」
「そ、自殺…だよ。
その後、あとを追うように母親まで…本当に仲の良かった家族だったって…
カズも相当ショックを受けて、自分も死のうとしたらしい」