第2章 幻想曲
ふたりが出ていった後もドアを見続けるニノ。
「ニノ…お前、ほんとにこのままでいいのか?」
「ん?なにが?」
「潤さんのことに決まってるだろ?」
ニノは少し視線を伏せ微笑んだ。
「いいんだよ、俺は潤の傍に居られるだけで…」
「でも、目の前で他の男を連れて帰るんだぞ?そんなことするような人を想い続けてて辛くないか?」
「そうだね…こんなことされたの初めてだからさ。正直ちょっとショック。
今までは相手の存在は知ってても姿を見ることなかったからね。潤がどんな風にしてるのか知らなかった」
潤さんのニノを見る目も翔を見る目も愛情に溢れた優しい目。
でも、その目は本来ならひとりに向けられなきゃいけないものなんだ。
「もう止めたら?ニノならニノだけを見てくれる人いくらでもいるだろ。相葉さんなんて優しそうだし、いい人そうじゃん」
「相葉さんがいい人なのはわかってるけど、相葉さんの俺に対する気持ちはそういうんじゃないから。あの人は俺のファンなだけだよ」
「ファン?」
「そう、憧れってやつ。まぁ同性愛者ではあるみたいだけどね」
「そうなんだ」
「それに潤のことはね、そんな簡単なことじゃないんだよ。
最初からわかってて潤の傍に置いて貰ってるのに今更『他の男抱いてるから離れる』なんて俺の身勝手だから」
「でもさ、通常恋人はひとりだけなんだぞ?
『俺だけにして』って言うのは身勝手って言えるのか?極々普通のことだと思うんだけど」
「普通じゃないんだよ、潤は…
多くの人を愛して、幸せにしてあげたい人なの。
俺が潤を縛っちゃったら、潤はやりたいことが出来なくなる。俺はそれをしたくないから…
だからいいんだ…
潤が思うように生きていって、その傍に居させて貰えるだけで。
それに例え俺ひとりだけじゃないってわかっていても、俺とふたりきりでいる時だけは俺だけを愛してくれてるし」
「ニノ…」
「まさか恋愛のことで、何年も独り身でいる智に心配されるなんてね…俺もまだまだだな」
憎まれ口を叩くけど、その表情は少しだけ嬉しそうに見えた。
「ありがと、智…心配してくれて」