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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第2章 幻想曲


「お手柄だったな、翔」

事の成り行きを黙って見ていた潤さんが嬉しそうに翔に微笑んだ。

「そんなんじゃないよ…ニノさんが困ってそうだったし、他のお客様にも迷惑になると思ったから…」

「それでいいんだよ。
お前が周りの人のことを考えて行動に出た…結果周りの人間が助かったんだ。
そうやって他人との関わり方を学んでいけばいい」

他人との関わり?そんなのこの年になって一から学ぶことか?

そりゃ人それぞれだからそういった事が苦手な奴もいるだろうけど…

翔の冷めきったような態度とほとんどないと言ってもいいくらいの表情はそういうことなのか?
他人との交流が少なく育てられた?

気性が荒そうには見えないし、立ち振舞いは上品だからそこそこの生活をしてきてるとは思うんだけど。

本当にどこぞのお坊っちゃまなのか?
箱入りで育てられて他人とふれ合ってこなかった?

でもそんなお坊っちゃまが潤さんに拾われる筈ないか…


閉店作業が終わるまで潤さんは店に居続けた。

着替え終わり店内に戻ると待っていた潤さんは椅子から立ち上がりニノの前に…

「お疲れ、カズ。今日も盛況だったな」

「そうじゃなきゃ困る」

笑顔で答えるニノ。
潤さんはその答えを聞き肩をポンポンと叩くと翔の方へと歩いていく。

「初仕事で疲れただろ?送ってってやる、行くぞ」

え?てっきりニノと帰るものかと…
潤さんが店に来るときはいつもニノと一緒に帰っていくのに。

そう思ってニノの方を見るとやはりニノも少し驚いたような顔をしていた。 

「大丈夫。俺歩いて帰るから…」

「ここからじゃ結構かかるだろ?遠慮するな。じゃあ、ふたりともお疲れ」

潤さんが翔の肩を抱き歩き出すと翔は首だけ振り返り少し頭を下げ挨拶をした。

「お疲れさまでした、お先に失礼します」

「お疲れさま…」

店を出ていくふたりの後ろ姿を見送るニノの瞳はやはり哀しそうだった。
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