第9章 愛の夢
「ひとりで大丈夫か?」
昼を過ぎて腹痛は治まったし、朝よりはだいぶ顔色もよくなったけど
食事をあまり摂らなかったから仕事は休ませることにした。
「大丈夫だってば
それよりニノさんにちゃんと謝っておいてね。
急に休んですみません、って」
「うん、わかった…何かあったらすぐ店に電話してこいよ?」
「ほんと心配症なんだから智は。
本当なら休まなくてもいいくらいなんだよ?」
クスクスと笑うけど、お前にだけだよ…こんなに心配するのは。
「じゃあ、行ってくる。なるべく早く帰るから」
「そんな訳いかないでしょ?
俺が休んでるのに、智まで早く帰ってきたらニノさんが大変になるじゃん」
「んー、臨時休業にするか…」
「もう!冗談言ってないで早く行きなよ」
呆れたように、ベッドに座る翔が手を伸ばし俺の背中を押した。
半分…いや、90%本気だったんだけど…
「わかったよ…」
翔の唇にチュッとキスをして、渋々歩き出した俺を翔が呼ぶ。
「智」
「ん?」
振り返ると、微笑んだ翔が小さく手を振った。
「いってらっしゃい」
メチャメチャ可愛いじゃねぇか!
「やっぱり…」
「ダ~メっ」
俺が全てを言い切る前に、翔に言葉を遮られてしまった。
「だよなぁ…いってきます」
「ふふっ、いってらっしゃい」
後ろ髪を引かれる思いで家を後にした。