第9章 愛の夢
そう言って翔の頬に手を添えたのに…
「じゃあ、ふたりが恋人になったことに乾杯ね」
って屈託のない笑顔でビールを差し出してきた。
まぁ、しゃあねぇな…お祝いだし、蓋開けちゃったし。
「乾杯」
翔の持つビールにコツンと缶をぶつけると、一気にビールを煽った。
「少し温くなっちゃったね」
「ん、でも最高に上手い酒だよ。
お前と恋人になった祝杯だもんな」
「うん、そうだね」
頬をピンクに染めながらも、嬉しそうに微笑みビールに口をつける。
そっか…こうやって思ったことを素直に口に出してやるだけでお前は喜ぶんだな…
だったらもう本当に遠慮しないからな。
翔の頬が紅くなり、飲むスピードが落ちた所で缶を取り上げた。
「はい、もう終わり」
「なんれぇ?まだ残ってるぅ…」
既に少し呂律が回ってないし…
「寝る前に、今日はまだやることが残ってるんだよ」
耳元で囁けば、紅い顔が更に紅く染まった。
「ほら、寝室に行くぞ」
手を繋いで引き上げ、歩き出すとおとなしくついてきた。
「あ、思ったより大きいね…」
寝室に設置されたベッドを初めて見る翔。
「置いてある空間が違うと、見た目も違って見えるよな」
「うん…」
「で、今日まだ残ってる作業は…
このカバーの取り付け」
「え…カバー?」
「そう。なに?何か他のこと想像した?」
「えっ?ううんっ…」
慌てて首を振る翔を見てると可愛くて、今すぐにでも抱きしめたい。
が、しかし初志貫徹…
まずは笑顔でカバーの取り付けをするであろう翔の姿を堪能させて貰わないとな。
カバーを手にし、いそいそと取り付けに励む翔…我慢してやっぱ正解だった。
たかがカバー付け、されどカバー付け…
幸せそうに微笑みながら作業する翔に愛しさが増す。