第9章 愛の夢
「ごめんな」
「え、なにが?」
「いや、俺…翔が俺のこと好きだって言ってくれたから、勝手に恋人になったつもりでいた」
「ううん、それならそれで全然いいんだよ?
ただ、智が今までと変わらないから
気持ちが通じるのと付き合うのは別なのかなって思っただけ」
「あのな?変わらないんじゃなくて変わらないように努力してんの」
「どういうこと?」
翔が首を傾げる。
「だからぁ、さっきも我慢できなくてキスしちゃっただろ?
本当はお前のこと抱きしめたいし、キスだってちゃんとしたい…
でもすぐにそんなことして、体目当てだって思われたくないから
帰ってきてから、ず~っと俺は我慢してんだよ」
「なんだ…」
翔がポツリと呟いた。
「なんだってなんだよ」
「だって俺だけが智に触れたいと思ってるのかと思ってた…
だから智の想いって、その程度のモノなのかなって…」
「そんなわけないだろ…
俺がどれだけ耐えてるのか、見せられるものなら見せてやりてぇよ…」
「あのね、智…耐えるとかしなくていいよ?
なんかさ、反って寂しかったりするから…
料理してるときも、智がお風呂に行ったときも、俺、避けられてるのかなぁ、って哀しくなった…
だから、智は智の思った通りにして?」
そうだよな…折角両想いだってわかったのに、その気持ちを抑える必要なんてないんだよな。
翔を守るつもりでとった行動が翔を哀しませてた…
「ごめんな…翔」
「なんでまた謝るの?もう謝ることないでしょ?」
「哀しい思いさせたから」
「もういいよ…
それだって俺のこと思ってくれたからだし。
でもこれからは、智の気持ちをそのまま伝えて欲しいな」
「うん…嫌って言うほど教えてやるよ、俺の気持ち…」