第9章 愛の夢
風呂に入って温めのシャワーで頭と体を冷した。
こんなんで効き目があるとは思わないけど、やらないよりはマシだろう。
長風呂が出来ない俺は、大した時間稼ぎも出来ずに風呂から上がった。
風呂場に閉じこもっていても、何の解決にもならないし…
リビングに戻ると笑顔の翔で翔が迎えてくれた。
「おかえり…智ビール飲む?」
「ん、飲む」
「じゃあ俺も飲もうかなぁ」
ソファから立ち上がりキッチンへ向かう翔。
「お前、昨日1本でフラフラだっただろ?大丈夫か?」
「だって飲みたいんだもん…」
冷蔵庫前で振り返る翔の少し拗ねた顔…
「わかったよ…でも無理して全部飲むなよ?」
「うんっ」
冷蔵庫を開けビールを取り出すと両手に1本ずつ持って戻ってきた。
「はい、智」
「サンキュ」
翔は俺にビールを手渡すと、すぐ横に座った。
プルタブを開け俺に向かってビールを差し出すと
「乾杯しよ?」
って笑顔を向けた。
「今日は何に乾杯?」
「ん~、新しいベッドが来たことに乾杯?」
「ははっ、なんだそれ?俺、ベッドに負けたの?」
「え?なんで?」
「いや、普通付き合い始めたらそっちに乾杯なんじゃないの?」
「…ねぇ、俺…智と付き合ってるの?」
確認をされ驚いた。
想いが通じあっても付き合うことにならない?
もしかして、翔にその気はないのか?
「え、違うのか?」
「だって智何も言ってないし…
それに何も変わらないから…」
『何も言ってない』はわかる。
確かに言葉にして『付き合おう』とは伝えなかった。
お互いの気持ちがわかったんだから、流れとしては付き合う方向で進むもんだと勝手に決めつけてた。