第2章 幻想曲
「相葉さん、今日はもうおしまいにされては?」
「え~っ、まだまだ飲めますよぉ…
マスターの作るカクテルはさいこぉですからぁ…」
思った通り
相葉さんは、最初の一杯を勢いよく飲みすぎて、酔ってしまったのに、その後もハイペースで飲み続けている。
自分が酔ってることがわからない、厄介なパターンだ…
いつもこんな飲み方しない人なのに。
大体、この店はこんな飲み方をする人は少ない。
みんなお酒の味を楽しみたくて、2、3杯飲むと帰っていかれたりする。
あとはニノと話したくて長居する客はいるけど、それでも酔い潰れたりする客は滅多にいない。
「マスター、次作ってよぉ…」
ニノも少し困った顔をした。
お客だしな…オーダーされたら断るのは難しい。
「相葉さん、これをどうぞ…」
翔がライムを刺したタンブラーを相葉さんの前に出した。
ジントニック?あいつカクテル作れるのか?
「ん~?櫻井くんが作ってくれたのぉ?ありがとぉ…」
ひとくち飲むと、相葉さんが眉をしかめた。
「何これっ?」
「今のあなたに必要な飲み物かと…」
「水?」
「はい、少しライムを絞ってありますけど」
「何でこんなもの…」
「だいぶ飲まれたようなので、少し休まれては?
それを飲んだ後でもまだカクテルを飲みたいと仰るならオーダーしてください」
本来なら店側の人間に、しかもこんな若造に言われたら怒られても仕方のない行為…
でも、何故だろう…
凛とした佇まいの翔は、何も言い返えせない雰囲気を醸し出している。
相葉さんはグラスを手に取り、ゴクゴクと喉を鳴らしながら水を飲んだ。
「はぁ~」
一気に水を飲んだ相葉さんが、大きく息を吐いた。