第9章 愛の夢
《智サイド》
家に帰ってくると、急にふたりきりになったことにソワソワした。
翔の気持ちがわかったからって、いきなりキスしたり抱きしめるのもなんだし…
それこそさっきのバカ女の『男はエッチ出来ればいいんでしょ』的な思考そのままじゃねぇか。
そりゃさ、好きなヤツには触れたいし
翔も俺のこと好きだってわかった今となっては、すぐにでも全てを欲しいと思うのは男の性だ
仕方のないことだろ。
でも、翔のことを最優先に考えれば、そこはなんとか気持ちを抑えよう…って頑張っているのに
なんだろうなぁ~、コイツは。
いや、翔が悪いんじゃない…別にこれといって何か変わったことをしてる訳じゃないし。
ただ気持ちが解放されたせいか、一段とキラキラとしてて、何をしても可愛く見えてしまうんだ。
ヤバいなぁ…出来るだけ近寄らないようにしないと、ほんとこの場で襲っちまいそう…
俺、こんなケダモノだったっけか?
今までここまでの衝動に駆られたことないぞ?
翔が風呂に入ってる間に一息吐いた。
理性を働かせるのってエネルギーの消費が半端ない…マジで疲れんだけど。
束の間の休息を取り、気持ちを落ち着かせた…のに。
風呂から上がってきた翔を見て心臓が跳ねた。
何気ないいつもの光景…湿った髪をタオルで拭きながらリビングに戻ってきた翔。
「お先…」
頬をピンクに上気させ、ニコッと俺に微笑みかけるだけ、なんら変わりのない日常の姿なのに…
もう駄目だ…今、翔が隣に座ったら、間違いなく俺は翔を押し倒す。
俺は逃げるように風呂場に向かった。