第9章 愛の夢
「お店で出来ない話だから待ってたんです」
「だとしても、こんな時間に待ち伏せするなんておかしくないですか?
事前に約束取り付けるとか、方法あったでしょ?」
俺の腕を強く握りしめ離そうとしない彼女…
「今まで何度も食事に誘ったじゃないですか…
それに応えてくれなかったのは大野さんでしょ?」
そう言われてしまえば、そうなんだけど…
「あの…俺、先に帰ってようか?」
翔が不安そうに俺を見る。
「いや、大丈夫だよ」
「大丈夫ってなんですか?
私は話がしたいって言ってるんですよ?」
「だったらここで話してください」
「こんな所で出来ません。
ふたりだけで話させてください」
こりゃ駄目だ…
ニノが言った通りだな。人の迷惑とか考えられないんだ。
「はぁ~、わかりました。
3分だけですよ」
「はいっ、3分でもいいです」
満面の笑みを浮かべた彼女。
なんで笑えるんだよ…俺が嫌がってるのさえわかってないのか?
「翔、すぐ済むから
ちょっとだけここで待ってて?」
「…うん」
「さ、行きましょ?」
嬉しそうに俺の腕に腕を絡ませ歩き出す。
もう、あり得ねぇんだけど…振り払う気力さえ失うわ…
店から少し離れた路地裏に入り
周りに人が居ないか確認する彼女。
「ここならいいですね」
「で?なに?
俺、アイツ待たせてるから、早くして貰える?」
ぶっきらぼうにいい放つ。
もう客だろうとなんだろうと、こんな女相手に優しく話すことなんて出来ない。