第9章 愛の夢
《智サイド》
ベッドの搬入が済み、ベッドカバーをセットしようかと思ったけどやめといた。
本当なら今のうちにやっておけば、帰ってきてから楽だとは思ったんだけど
なんだか翔と一緒にやった方が、いい気がしたんだ。
その方が、アイツが喜ぶんじゃないかって…
まぁ、俺の願望だったりもするんだけど。
俺も意外と乙女な心持ってたりする?
折角ならはじめての作業を翔とふたりでしたい…
で、おそらく、いや絶対嬉しそうにカバーを付ける翔を見たい。
あいつの幸せそうな笑顔が見たいんだ。
翔のことを考えながら店の前まで来ると、ピアノの音が聴こえてくる。
中に翔がいると思うと、それだけでも顔が緩む。
ドアを開けた瞬間、翔が振り返り俺に笑顔を見せた。
「思ったより早かったね」
更に緩みそうになる顔を引き締めながら、翔の隣に立った。
俺を見上げる翔の瞳はキラキラと輝いていて
その瞳を見てるだけで抱きしめたくなる。
勿論そんなことは出来るわけがない…
平常心を取り戻すように会話を続けると、翔が拗ねた顔をした。
なんだかなぁ…
笑顔も可愛いんだけど、この拗ねた表情も堪らなく可愛く見える。
俺にしか見せない表情…俺にだけ甘えてくれてる証拠。
ポンポンと頭を叩くとまたいつものセリフ…
「子供だと思ったでしょ?」
「思ってねぇよ…」
もう子供なんて思えねぇよ…
ほんと人の気も知らねぇで。
その表情が俺の心を落ち着かなくさせてるって、教えてやろうか?