第9章 愛の夢
「ありがとうございました」
「役に立つアドバイス出来た?」
「はい…とても…」
このまま智を好きでいていいんだとわかっただけで
こんなにもワクワクした気持ちになれるなんて…
「ふふっ、それは良かった。
いい顔してるよ?今の翔」
ニノさんの笑顔が俺にエールを送ってくれてるみたいで嬉しくなった。
ニノさんに相談して良かった。
智に出会えたことも幸せだけど、ニノさんとの出会いも俺にとってはとても大切な出会いだ。
「まだピアノの練習するんでしょ?
俺、事務仕事してくるね」
「はい」
「じゃあ…頑張れ」
ニノさんが椅子から立ち上がり、その背中を見送ったあとピアノに向き直った。
ピアノのレッスンを再開させ暫くすると、智が店に来た。
「思ったより早かったね」
智は俺の横に立つと椅子の背凭れに手を置き、俺を見下ろす。
「あぁ、お前が出掛けてからすぐに配達に来てくれたから。
古いベッド持ち出してから入れて貰ったから、多少時間は掛かったけどな」
「今度のベッドは前のより大きいしね。
運び込むの大変だったでしょ」
「相手はプロだから全部任せた。
俺は置く位置を指示しただけだよ」
「それもそうだね、余計なことすると邪魔なだけだもんね」
「邪魔って、お前…
まぁ実際そうだけどさ」
「あれ?拗ねた?」
「拗ねてねぇよ。翔じゃねぇもん」
「俺だって拗ねないよ」
「はいはい」
智の手がポンポンと頭を叩いた。
「あっ、また子供だと思ったでしょ?」
「思ってねぇよ」
智は目を細めて微笑んだ。