第8章 カノン
《翔サイド》
昨夜は智のこと変に意識して緊張しちゃう、とか思ってた。
でも、アルコールのお陰なのか智のお陰なのか、今までと変わらず智と一緒に眠ることが出来た。
やっぱり智の傍って安心するんだよな…
おまけに手まで繋いでくれたし。
大好きな智の手が益々好きになった。
目が覚めた時も手は繋いだまま…
夜中、少し意識が浮上した時、智の手が離れそうになってるのが寂しくて、指を絡ませ離れないように握り直した。
でも、目が覚めた時、そのまま繋がれていた事に驚いた。
先に目を覚ました智が、そのまま繋いでいてくれた事が嬉しい。
今まで手を繋ぐ経験も少なかった俺…
それを智に伝えたら『出来なかったことを言え』なんて言ってくれて。
だから思わず『抱っこ』って言っちゃった。
両親に抱っこしてもらった記憶がなかったし
せっかくだから、智の優しさに甘えちゃおう、なんて狡い気持ちが働いた。
昨日は、智に気持ちを悟られないようにしなくっちゃって思ったけど
日々の生活で智に対して免疫がついていたのか、それほどドキドキせずに近くにいられるから
抱っこくらいなら大丈夫かな、って思ったんだ。
だから、智に呼ばれ抱きしめられてドキドキはしたけど
『恥ずかしい』よりも『嬉しい』想いの方が強かった。
慣れって凄いな、なんて感心して油断したのが俺の甘さ。
俺が想像もしなかった行動を智はとった。
いきなり足を掬われ、慌てて智の首にしがみつくとすぐ目の前に智の顔…
さすがにこれはマズイ。
しかも今までは智を見下ろす感じだったのに
今は智に見下ろされ見つめられてる。
「これなら抱っこぽい?」
「う、うん…そうだ、ね…」
初めてのシチュエーションにドキマギし、顔が熱くなってきた。
鏡なんか見なくたってわかる。
間違いなく、俺の顔は今、真っ赤だ…