第8章 カノン
俺が翔を嫌うことなんてある筈ないのに…
翔のことが可愛くて、翔がすることなら何でも許せちゃうくらい惚れてるのに…
でもそれを知ったら、離れて行くのはお前の方。
もし俺の気持ちがお前にバレてしまったら
お前はどうなってしまうんだろう…
信頼していた人間に裏切られたと思う?
恋愛感情はない、なんて思わせといて
一緒のベッドに寝てるんだもんな…
気色悪いよな。
下手すりゃ二度と近づいて貰えない…
それくらいで済めばいいが
翔が人間不信に陥る可能性だってあるんだ。
やっぱり隠し通すしかねぇよな…
翔が俺の元を離れて、ひとりで生きていけるようになるまで。
ずっとここに繋ぎ止めておきたいと思うけど
俺の気持ちを伝えていいのは、翔がここから巣立った後なんだ。
それまでは翔が安心出来るように『智ママ』でいてやるよ。
お前がひとりで生活するのに困らないように、いろんな事教えてやるからな。
「…ん…おはよう…智」
「起きたか、寝坊助…メシの用意するぞ?」
翔の髪をグシャグシャっと撫でた。
「起きてるなら起こしてくれればいいじゃん」
「俺も今起きたとこ…」
「なんだよ、智だって寝坊助じゃん」
少し剥れた顔をした…
ほんと色んな表情見せるようになったよなぁ。
「ははっ、バレたか」
「もぉ、すぐ人の事からかうんだから」
「だってお前、簡単に信じるんだもん。
もっと人を疑うってこと学ばなきゃ、すぐに騙されるぞ?」
「大丈夫だよ、俺が信じてるのは智とニノさんだけだもん」
「すぐからかうのにか?」
「からかわれてても。
例え騙されてたって、智の言うことなら信じるよ」
ニコッと笑ってそんなことを言うけど
結構な殺し文句だぞ、それ。
わかってんのかなぁ…
他の奴には絶対言ってくれるなよ。