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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第8章 カノン


すぐ傍に感じる翔の息遣いから、泣いているのがわかった。
翔の顔を覗き込むように見ると
少し伏せられた瞳から、溢れた涙が頬を伝っていた。

「お前ってほんと泣き虫だな…」

翔の右腕を軽く掴み、そのまま胸に引き寄せた。
肩口付近で頭を抱え込むと、翔は俺の腕にしがみついてくる。

「ふっ…ぅっ…さ、としのせいだよ…
智のせいで、俺は泣き虫にな、たんだ…」

顔を伏せたまま、泣きじゃくりながらクレームを言う。

「そっか…俺のせいか…」

コクコクと小さく頷く翔…
そんな仕草が可愛くて、自然と顔が緩む。

「じゃあ、しょうがないな…
責任取って、好きなだけ泣かせてやるよ」

翔の頭に添えていた手で、何度も髪を梳いてやると
翔の両手が俺の背中に回り、洋服を握りしめた。

なんだろうなぁ…今までこんな可愛いヤツ見たことないんだけど…

そうだよ…本来、俺は野郎に興味なんてなかったんだ。 
どんなに小さな男の子でも、可愛いなんて思ったこと一度もない。
翔にも『俺はそっちの趣味はない』って宣言したし…

翔と初めて会ったときは
可愛い気がないヤツ、ってっ思ったくらいだし。

それがすぐに可愛いヤツに変わって
今となっては、愛おしくて仕方がない存在…

恋愛に無頓着だった俺が、こんな子供相手にマジで惚れるなんてな…
自分でも信じられないよ。

今はまだ、伝えない方がいいであろうこの想い…
いつか翔に伝えられる日が来ますようにと、願いながら
翔の背中に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。
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