第8章 カノン
《智サイド》
店を出て3人で歩き出すと、すぐに違和感を感じた。
いつもニノと別れる所まで、3人横に並んで歩くんだけど
今日はその並び順が違うんだ。
俺の隣に翔がいない…無意識なのか意識していたのかはわからないが
この三ヶ月間、翔は常に俺の隣を歩いていた。
それなのに今日は、ニノを挟んでその向こう側にいる。
たったそれだけの事なのに…
翔は俺が隣にいなくても平気なんだと思い知らされて、少し寂しくなった。
家に来てから、殆どの時間を一緒に過ごし、捨て猫から甘えん坊の猫に育ったと思ったのに
一気に親離れされた気分。
俺…相当ヤバいことになってんなぁ…
俺の隣を歩かなくなっただけの事なのに、結構ダメージ受けてるぞ。
相葉さんの誘いを無事に断れたと知って、相葉さんには申し訳ないが心底安堵した。
人の不幸を喜んだりしたから、俺にも罰が下ったのか…
潤さんの話題から、潤さんの寝室事情に話が移り
翔の口から『だって嫌でしょ?いつも自分が寝ているベッドで他の人を抱いてるなんて』という発言が出た。
俺としては内心『え?そういうもん?』なんて思ったんだけど
ニノがすぐに翔の言葉に賛同したから、そういうもんなのか…って納得した。
潤さんも意図的に客室を用意してたとしたら、ふたりと同意見ってことだもんな。
俺よりも翔の方が、恋愛に対する気持ちがわかってんだなぁ…
それとも俺が無神経なだけ?
そんな俺でも、翔に対しては誰にも譲れないって想いは強く持ってるんだけどな。