第1章 プレリュード
「あ、そうだカズ…翔もピアノ弾けるから弾かせてやって」
「へぇ、そうなんだ。
じゃあ今ちょっと弾いてみる?
まだお客さん入ってきてないし、やることもないから」
「いいえ、ピアノはちょっと。
これから先も弾くつもりはないです」
「え、でも弾けるんだろ?
だったら弾いてよ。
結構、お客さんからリクエスト貰うんだけど、なかなか弾く時間なくて。
ピアノの生演奏聞きながら飲むのって、気持ちが落ち着いて良いみたいよ?」
「それはニノさんの演奏だからです。
俺の演奏じゃ、落ち着くどころか気落ちしますよ…」
そう話す翔の方が気落ちしていってるような…
「翔、無理に弾く必要はないよ…お前が弾きたくなったら弾かせて貰え。
ニノも翔に無理強いはしないでやってくれ…」
「ん、わかった…」
翔がピアノ弾けるなんて、さっき話してた時には全く言ってなかったな。
大した腕じゃないから言わなかった?
だったら客の前で演奏させるのは店の為には良くないかも。
『カランッ』
店のドアが開き客が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
「こんばんは」
常連の相葉さんが笑顔と共にやってきた。
「いらっしゃい、相葉さん」
「こんばんは、マスター」
優しい瞳でニノを見る相葉さん。
この人、ニノのことお気に入りなんだよな。
話を聞いてる感じでは、凄くいい人だし…潤さんから相葉さんに乗り換えちゃえばいいのに。
相葉さんだったら、幸せにして貰えそうな気がする。
って、まぁ無理か…
ニノが潤さんを想う気持ちは、何があっても揺るがなそうだしな。