第7章 愛の挨拶
《智サイド》
「智…俺が探していたもの、智のお陰で見つかった」
俺の方を向いて涙を流した翔…
その涙が…そして幸せそうな微笑みが、綺麗で愛おしくて…
後でニノに冷やかされんだろうなぁ、とは思ったが
そんなことどうだっていい…
今は翔のことを抱きしめたい。
「そっか…よかったな…」
そう言いながら、そっと翔を抱きしめると、翔は俺の肩に顔を埋めた。
俺の背中に腕を回わし、遠慮気味に俺に抱きついてくる。
その仕草が可愛くて、思わず腕に力をこめ、強く抱きしめてしまった。
それでも翔は俺に大人しく抱かれていて
それどころか、俺のシャツをギュッと強く握りしめた。
「…智が母親だったら良かったのに…」
「へっ⁉」
「ぷっ!」
俺の変な驚きの声と、ニノの吹き出した笑いが重なった。
「あっ!ごめん…俺、変なこと言ったよね?」
俺の肩から慌てたようにあげた翔の顔は、真っ赤だった。
「いや…いいんだけど…」
翔が言った『大切な人』ってそういう意味?
家族的な存在ってこと?
なんか期待した自分が、恥ずかしすぎる…
「良かったな智ママ、こんな可愛い息子が出来て…ぷっ…」
ニノが笑いながら俺の肩を叩いた。
畜生!色んな所がイテェよ…
「ごめんねっ、智…俺、思ったことつい口に出しちゃった」
俺とニノのやり取りを見て、オロオロとする翔。
「気にするな…お前がそれだけ俺を頼ってくれてるってことだろ?
母親の代わりだろうと父親の代わりだろうと、構わねぇよ」
俺からの愛情を受け入れてくれてるってことだもんな。
とりあえずは、また一歩前進したことを喜ぼう・・・