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きみに届けるセレナーデ 《気象系BL》

第7章 愛の挨拶


「この店の雰囲気ってさ
結局はニノさんと智の作り上げたモノなんだよね。
ふたりともお客様の為に、より美味しくカクテルを飲める空間を提供してる。
だから俺もその邪魔をしないように、耳当たりのいい曲を弾けたらなって思ったんだ。

それなら、堅苦しいクラッシックじゃない方がいいかなって」

「でも今の曲はいいんじゃないか?
しつこいようだけど、俺は好きだぞ?」

「うん。智がそう言ってくれるなら『月の光』は弾くね。
元々は智の為に弾くんだから、智の好きな曲だけを弾きたいんだけど
智あんまり曲知らないみたいだし、適当に選曲しちゃうよ?」

「おう…任せた」

優しい微笑みを浮かべてくれる智を見るだけで、体の中が温かくなる。

「ありがとね、智。
俺、智といるだけで、好きな物が増えてくよ」

「俺もだよ…」

「智も?」

「あぁ…だからさ、俺の為に色んな曲弾いてくれよ。
俺の好きな物が増えるように」

「うん、わかった」

「でも今は、もう一度聴かせてくれるか?『月の光』」

俺は笑顔で頷くと、智の為に『月の光』を演奏した。

俺の隣に座る智の気配が優しくて、それに応えたいって思った。
俺の感謝の気持ちは智にちゃんと届いてる?

演奏が終わると、背後から拍手が聞こえる。

振り返ると優しい表情のニノさんが、店の入口付近に立っていた。

「おはようございます、ニノさん」

「おはよ。翔、凄く良い演奏だったよ。
これで安心して演奏任せられる」

「ありがとうございます」

「やっぱり人の為に弾くって、それだけで音に色が乗るよね」

「色が乗る?」

「そう…翔が智をどう思ってるのか、音を聴くだけでわかるよ」
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