第7章 愛の挨拶
翔の腕を掴み、なるべく通行人の目につかないように道の端に移動した。
「翔、一回深呼吸してみろっ」
焦りまくってる俺は、何とか翔の気持ちを落ち着かせようと深呼吸を促した。
『すぅ~っ…はぁ~…』と、思いっきり息を吸い大きく吐き出すと若干落ち着いたような…
「大丈夫、か?」
翔の様子を伺うとコクンと頷いた。
「…ごめん」
「ははっ、謝んなよ。
嬉しかったんだろ?」
「うん…」
「翔が泣くのは哀しいからじゃないって学習したよ。
ほんと泣き虫なんだから」
今までの傾向からして、人情に触れたときに泣いてるんだよな。
「智に出逢ってからだよ…
俺、前は人前で泣くなんてしたことない」
「そうか…」
俺と出逢ってから、感情が増えたってことは嬉しいんだけど
でも実際は寂しいことなんだよな…こんなに泣き虫な翔が、人前で泣いてこなかったってことは。
「これからも沢山泣かせてやるからな」
「え…」
「だからぁ、いっぱい喜ばせてやるって言ってんの」
「あっ!うんっ、ありがとう、智」
翔は俺が言った意味がわかったらしく、満面の笑みを浮かべた。
やっぱ可愛いじゃねぇか!
くっそぉ~、家の中だったら、間違いなく抱きしめてやったのに…
まぁ仕方ない…俺は翔の頭を撫でるだけで我慢した。
「さぁ、行くぞ」
「うん」
「何か食いたいものある?
たまにしか外食しないんだから、好きなもの言えよ」
「ん~…オムライス?」
「なんで疑問形なんだよ。
自分の好きなものもわからないのか?」
「わかるよ…だって一番好きなものは、智の作った味噌汁だから、外じゃ食べられないでしょ?」
ニコッと笑った翔。
……今度は外で助かったと思った。
きっと家の中だったら、抱きしめるだけじゃ済まなかったな…