第7章 愛の挨拶
《智サイド》
翔のお目当ての楽譜を手に入れたあと、メシ屋を探しながらふらふらしていた。
ふと、目に入ったインテリアショップ。
昨夜、翔と一緒に寝てて思ったんだよなぁ…もっとデカいベッドが欲しいなって。
今のベッドで密着して寝られるのは、正直嬉しい。
でももうちょっと余裕があった方がいいよな。
「この店入ってもいい?」
ベッドコーナーを見つけ、翔にその事を伝えると少し困った様な表情をした。
あれ?俺、強引に話し進めすぎた?
いつも翔がすり寄って寝てるから、テッキリ喜んでくれると思ったのに。
押し付けられる愛には拒絶反応示すってこういうこと?
「翔が嫌ならハッキリそう言えよ。そうすれば俺も無理に話し進めないからさ」
翔が俺から離れて行ってしまわないように、翔がどう考えてるか知りたい。
だから、翔には自分の思いをちゃんと言うように伝えた。
「ごめんなさい…ほんとは凄く嬉しいんだ…
嬉しいんだけど、智に迷惑掛けたくないから…」
子供が親に謝るように俯いてしまった。
なんも反省することなんてないのに…それどころか『凄く嬉しい』なんて可愛いこと言ってくれちゃって…
今すぐ抱きしめたい衝動に駆られるが、勿論そんなこと出来るわけもない。
その思いを何とか静め、代わりに頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「いいコだ」
ふたりであれやこれやとベッドを選んでいたら
新婚夫婦が新居に置くベッドを探してるみたいに思えてきて、急に嬉しさと恥ずかしさとでくすぐったくなった。
「なんかさ、ふたりでベッド選ぶって新婚みたいじゃね?」
翔にそう言うと表情が固まり頬を紅く染めた。