第2章 出会い
とは言ったものの今はまだ家には帰りたくない気分だし、夜も遅いしビジネスホテルにでも泊まってそこで別れようか…と思考しながら駅構内をうろうろしてると飲食店が並ぶ通路に入り込んでしまっていたようで、隣の彼に視線を向ければ手はしっかり握ったまま周りを珍しそうに見渡していてはしゃいでいるみたいに見えた。
「お腹空いてない?何か食べたいのとかある?」
そう尋ねれば目を輝かせながら見つめられた。
これは了承と捉えていいのだろうか?
そう思いながら反応を待っていると彼の視線の先にはこの通路の案内板があるのが分かった。
何の店がどこにあるのか一目瞭然だし、言葉を発しなくてもそこを指差してくれればその場所に向かうだけだから物凄く便利である。
案内板の前に移動して2人一緒にそれを眺める。
うどん屋にそば屋にラーメン屋
のんびり出来そうなカフェやバーガー店もあるらしい。
こんなにあると流石の僕もちょっと揺れる。
沢山の飲食店があると言う事はそれだけの匂いもするわけで当然食欲を唆られてしまう。
然しそれは彼も同じな様で…
聞こえてしまった。彼のぐうの音が。
案内板を見るふりをして横目で見やれば仄かに顔を赤くしながら俯いているのが見えた。