第2章 出会い
─壮五side─
電車に揺られながらこれからの事について考え込んでいたから彼がすぐ近くに居た事には気付かなかった。
異変に気付いたのはそれから少しして周りが止まって見えた時だった。
僕の目の前に紺がかった髪の少年が居て、その先には30代くらいの男性が居て僕に触れようとしていたのか、明らかに不自然な姿勢で微動だにしなくてなんとなく状況を理解すると同時にその子と視線が合うと僕の手を握って来た。
その手は少し震えていたけど僕を守ろうとしてくれているのは状況が語っていた。
と同時にドアが開き手を引かれながら電車から逃げるように降りると先程まで動かなかった体が動いた。
ホームを少し進んだ所で「ありがとう」と声をかければ
僕を見上げる彼。
然し返答は無く「大丈夫?」と声をかければハッとしたように頷いた。
その仕草が少し可愛いと思ってしまった。
そう思ってると彼は鞄からスケッチブックを取り出し何かを書き始めた。
彼は声が出ないのかな?
そんな事を考えていると最寄り駅を聞かれ取り乱してしまう。
更に匂いがするからと言われてキョトンとしていると、人が増えて来た事に気付いた彼が握っている手に更に力を込めたのが分かった。
「…じゃあお願いしようかな?」
気付けばそう言っていた。