• テキストサイズ

【YOI】輝ける銀盤にサムライは歌う【男主&ユーリ】

第2章 汝の夜は、未だ明けぬ


「バカ、オタベック。こいつが『サムライ』だ」
ユーリの言葉と、彼の隣に腰掛ける金髪碧眼の少年が身に纏うナショナルジャージが目に入ったオタベックは、弾かれたように謝罪をした。
「これは失礼した。俺は、オタベック・アルティンだ」
「…存じております、『カザフの英雄』。お初にお目にかかります。僕は、日本の伊原礼之です」
心なしか国籍の部分を強調しながら、慇懃な態度で会釈をした礼之を見て、ユーリは礼之が内心かなり腹を立てている事に気付く。
以前GPSのバンケットで、礼之が己の容姿が原因で不愉快な想いをする事があるのを聞いていたので、何とか彼の機嫌を直そうと再度口を開いた。
「落ち着け。オタベックだって、わざと間違えた訳じゃねぇだろ」
しかしそんなユーリの言葉に、礼之は先程よりも眉を逆立てた。
ユーリの隣から立ち上がると距離を空け、努めて無表情のまま2人に向き直る。
「お友達同士で、積もる話もおありでしょう。『後輩』の僕は、これで失礼させて頂きます。それではまた試合で」
「礼之?おい、待てよ」
最敬礼して自分達から踵を返した礼之に手を伸ばそうとしたユーリだったが、彼の背に触れようとした刹那、その手をピシリと払われる。
「!?」
「…っ」
驚愕に目を見開くユーリに、礼之は一瞬だけ気まずそうな表情をしたが、そのまま足早に立ち去る。
残されたユーリは、払われた手の痛みも気にならぬ程礼之の唐突な豹変ぶりに、呆然と見送る事しか出来なかった。

「何で、いきなりあそこまで礼之の奴が怒ったのか…俺、訳が判らなくて」
困惑するユーリを他所に、純とオタベックは顔を見合わせる。
「大体の事情は判ったわ。ユリオくんも思う所はあるやろうけど、今は競技だけに集中した方がええ」
「けど、」
「礼之くんにも言うたけど、今君達は世界一を決める試合に参加しとんねんで?現役時代の僕が、どう頑張っても出られんかった大会に」
「サユリの言う通り、今の俺達には試合が最優先事項だ。俺も、試合が終わってから改めて彼に謝罪するつもりだ」
兄のように慕う男と友人の言葉に、ユーリは不承不承といった風に頷くも、心の奥底に燻る礼之への複雑な想いを持て余していた。
/ 26ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp