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【YOI】輝ける銀盤にサムライは歌う【男主&ユーリ】

第3章 闇夜の脅威を消し去れ


ほぼノーミスで演技を終えたユーリは、その瞬間拳を握りしめると、雄叫びを上げた。
「…あれ程、美しさを忘れぬようにと言ったのに」
渋面を作るリリアだが、ユーリの会心の演技は認めざるを得ないようで、会場の大歓声に紛れて小さく拍手をした。
「凄い…」
最終滑走グループに入ってから、礼之は選手達の演技に圧倒されっ放しだった。
これが、世界を狙えるスケーター達の実力なのだと考える一方、今はどうしてもそこには手が届かない己の未熟さに歯噛みする。
すると、そんな礼之の背後から純が優しく声をかけた。
「あれは、君が引き出したんでもあるんやで」
「え?」
「皆、君の演技を見てから明らかに顔付きが変わった。そら、シニアデビューの選手にあそこまでの事されたら、気張らん訳にはいかんやろ」
「…」
「礼之くんは、あの演技で会場の皆や選手達を間違いなく感動させた。それは、技術や経験だけでは決して出来ひん事や。胸を張りなさい。そして、これからもっと強うなり」
「…はい!」
純と、いつの間にか隣りにいた南に微笑みかけられて、礼之は力強く頷いた。

滑走者が残り1人となった所で、総合順位は1位が圧倒的な貫禄を見せつけた勇利、2位にクリス、3位はFSで巻き返したユーリとなっていた。
最終滑走者のオタベックは、コルセットを外した腰の具合を確かめながら、リンクに視線をやる。
「無理はするな、と言いたい所だが…聞かんのだろうな」
「あのような演技を目の当たりにして、燃えない選手などいない。妥協は不要だ」
苦笑するコーチにそう返すと、オタベックはリンクの中央へと進んだ。
(…世が世なら、俺はお前に無礼討ちにされてもおかしくない真似をした。いずれ、この詫びはさせて貰う)
自分の誤解による発言から機嫌を損ねた、金髪碧眼の日本人の少年の姿を、オタベックは脳裏に思い浮かべた。
(だが、お前はこの大舞台で見事にやってのけた。だからこそ、お前の全力に俺も全力で応える。『ソルジャー』の戦い…しかとその目に焼きつけろ、『サムライ』!)
力強く滑り出したオタベックは、冒頭の4Tをこなすと、腰痛を抱えているとは思えない動きで、早くも周囲を魅了し始めていた。
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