第43章 夜の かまくら の楽しみ方ーR18ー(謙信)
固められた雪を雪下駄で踏めば、
キュ、キュ、ギュッと音がする。
静かな夜。
「燈とその包みをかせ」
「え?」
「手が冷える。
綿入の手袋があったであろう。
してくれば良いものを……」
呆れたように言った謙信だったが、片手に包みと提灯を持ち、空いてる方の手で、華月の手を握った。
(ふふふ。優しい)
「………」
謙信は眼を見張って驚いているようだった。
「…華月これは何だ…」
「かまくら ですけど?」
華月は首を傾げた。
(謙信様、かまくら 知ってると思ったんだけど…作ってるのも見てたし……)
「かまくら、知りませんでした?」
「貴様、馬鹿にしているのか?
知っているに決まっている」
「じゃぁ、なんで…」
「何ではこっちの台詞だ。
かまくら とはそもそも、水神を祀る為のものだ。
神の座する場所、*神座(カミクラ)から かまくら となったと言われている。
その神聖な場所に畳、火鉢を置いて何をしている」
(ひーっ…)
華月は背筋を凍らせる。
※かまくらの語源は諸説あり、そのうちの一つです。