第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
そして、頭上から家康の声がした。
「…嫌じゃない…アンタが俺のこと好きだなんて思わなくて……」
(え…じゃぁ…)
「…無理って言った…ごめんって言った…」
顔を上げ、家康の腕の中から、家康を見上げる。
「…抱きしめるの、ごめんって……」
「ふぇ…ぅ…グズッ……ぅぅ…」
「…アンタのこと、好きでごめん、って……」
「ぅ…ふぇぇ〜…家康の馬鹿ぁ〜…」
涙腺が決壊した。
「なんで……ごめんって…ごめんって言うのぉ〜」
泣きながら抗議した。
「わかった、わかったよ。ごめんって…」
「また、ごめんって…」
「ごめん、泣かないで、華月…」
強く抱きしめなおされた。
「泣かれると困るんだよ…」とボソっと小さく呟く家康の声がした。
「華月ーー…泣かないで」
思いがけず優しい声が降ってきて、顔を上げると、
困ってるけど、真剣な顔の家康が私を見ていた。
「好きだ。だから、泣き止んで……」
と言われ、唇が触れる。
(キス………家康が、私に…キス…)
思考回路がショートした。
唇が離れても私は、ぼーっと家康を見上げていた。