第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
「言いたい事、あるなら言えば?」
家康がぶっきらぼうに言った。
(…好き、好きだよ。
言って良いなら言いたい。
でも、そう言って嫌われるのは耐えられないよ……)
言いたいのに言えない、ジレンマだ。
けど、このまま黙ってたら、家康の事だから
『黙ってるって事は、好きじゃない、嫌いだって事だよね』って言いそうだ。
(誤解されるのは、
誤解するのは…もう、嫌だよ…)
本当は優しいこと、
気を遣ってくれてたこと、
心配してくれてたこと、
私は誤解してた。
家康の言葉の裏に隠されたソレに気付けなくて。
『私の事、嫌いなんだ』と思って距離を感じてた。
でも、それは全部、私の勝手な誤解だった。
あんな寂しい思い、もう、したくない。
言いたくて、声が上手く出せなくて、
言ったら泣きそうで、
どうしようか、家康を見上げ、見つめた。
(何も言わなくても届けばいいのに…)
でも、それは無理なことだ。
解ってる。
(それに、もう、気付かないフリ出来ないよ)
だから、私は意を決して、
息を吸った。
「家康のことーー…」