第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
(……嫌いだって言われたくないから?
好きだって言われたいから?)
そんな疑問が浮かんだ。
自分の気持ちが判らなかった。
「……えっと……」
(そんなに考える事なの⁉︎)
俯いてしまって、さっさと答えない華月に何故か苛立った。
「っ…いいよ、無理に答えなくったって」
(分かってるしっ)
苛々した。
「ほら、行くよ」
俺はそれ以上 苛々したくなくて、
歩き出そうと華月の手を引っ張った。
けど、
華月は動かない。
立ち止まったまま、何かに耐えるような表情をしている。
「なに」
泣きそうな顔で、何かを言いたそうにする。
「言いたい事、あるなら言えば?」
そう言ったけど、言って欲しくなかった。
聴きたくなかった。
俺を拒絶する言葉なんて。
でも、もう、口にしてしまった。
後の祭り。
やっぱり言わないでなんて口が裂けても言えないから、
華月が口を開くのをマンジリとした気持ちで待つ。
華月の手はどんどん温かくなるのに、
俺の手はどんどん冷えてゆく気がした。