第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
アレから、
家康が戦から帰ってきた日から、
私はやっぱり、どうもおかしい。
何がおかしい、って
まともに家康の顔を見られない。
声を聴くとドキドキする。
いつも頭の隅に家康がいる。
ついつい避けてしまう。
(これは本当にマズイ…)
あの気持ちの名前はわからないフリをした。
でも、否応無しに分かってしまって、
意識してしまう…。
私は町を早足で歩いていた。
(夕暮れは早く帰れって皆に言われてるのに!)
現代と違い街灯も、家の電気も無いこの時代は、日が暮れてしまうと、本当にすぐに真っ暗になる。
暗くなると町中でも野良犬も出る。
柄の悪い人も出る。
だから、秀吉さんには口を酸っぱくして言われていた。
(思ったより遅くなっちゃったよ…)
川向こうのら着物の染め屋に行っていて、
色々見せてもらっていたら遅くなった。
夢中で見ていて時間を忘れていた。
「怒られちゃう〜」
早足から小走りになる。