第39章 視線の先、君の声が泣いている(家康)
華月はそれから、俺を見ても怯える様子はなくなった。
でも、何となく、余所余所しく感じる。
秀吉さんや、政宗さんの距離が近すぎるくらい近くても、平然として、
平然と頭やら、頬っぺたやらを触らせているのに、俺には…。
(いや、俺はベタベタ触ったりしないけど?)
俺には、あまり近づかない。
人1人分くらいの距離があって、
ろくすっぽ目も合わせないで、話を終え
「じゃぁ…」と言って去る。
(何なんだよっ)
ちょっと荒んだ気持ちになるのは、
何なんだ、よ。
華月にも自分にも「何なんだよ」と悪態をついた。
それでも俺の眼は華月を追っていた。
多分、正しくは
「意識」が「無意識」に、華月を追っていた。
(いったい、どうしたんだ…)
と言う自問の、確実な理由を
俺は不当にも胸に押し込めた。